このところ何度か「今夜は満月だ」と聞きながら空を見上げたが、なぜか心に響くような美しさを感じることは少なかった。
しかし、今夜の月は違う。
10月8日、中秋の名月というわけではないが、帰り道にふと見上げた空には、ほぼ満月に近い月が明るく輝いていた。
雲の切れ間から差す光がいつもより強く、空気の澄み方もどこか特別であった。この数日の中で、間違いなくいちばん綺麗に感じた夜である。
思わず部屋に戻り、カメラを手にして共有スペースの廊下に出た。ファインダー越しの月は大きくはないが、光そのものが存在感を放っている。
静かな徳之島の夜、海風に揺れる木々の影とともに、月がゆっくりと島を照らしていた。
