徳之島に咲く濃桃色の時間

徳之島days

徳之島では、年始早々に桜の蕾が膨らみ、1月後半から2月にかけて満開を迎える。
この桜は寒緋桜と呼ばれ、本州のソメイヨシノに比べて濃いピンク色の花を咲かせるのが特徴だ。

日本の南部でこの桜を見ることができるのは、沖縄県や鹿児島の離島ならではの光景である。

土曜日は、春一番を思わせるような強い風が吹いていた。島の内陸部を車で走っていると、偶然その桜が目に入り、足を止めて撮影した。まだ満開ではなく、ちらほらと咲き始めたような姿だった。

初めてこの島を訪れた時には、季節外れだったのか、桜の咲く時期を知らず、気づくこともなかった。桜が咲かない島なのかと思っていたほどだ。だが、注意深く見ていると、島のあちこちにこの桜が咲いているのがわかる。

不思議なことに、この時期に桜を見ても、本州のように桜の木の下で酒を酌み交わす光景はない。なぜだろうか。ハブがいるからだろうか。それとも、この桜はただ「見る」ためだけのものなのだろうか。

島風に揺れる濃いピンクの花を眺めながら、そんな問いを抱く時間もまた、この島ならではの贅沢だと思える。